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株式会社デジタリーフ

次のステージに進むための選択肢、譲渡先との高いシナジー見込む

譲渡企業譲受企業
㈱デジタリーフ㈱ラプラス・システム
東京都京都府
受託システム開発・SES太陽光計測システムの運営
スキーム 株式譲渡

東京都江戸川区に、画像解析技術を駆使して自然災害の発生を自動検知する監視カメラシステムを開発・提供するIT企業があります。日本電信電話(NTT)を経て、米シリコンバレーのITベンチャーのVice President 兼COOを務めた寺島健一さん(49歳)が2001年に創業した株式会社デジタリーフです。

寺島さんは、このほど増収増益で成長を続ける同社をM&Aで譲渡しました。そこで、寺島さんに主力の自動検知型監視カメラシステムや、M&Aを検討した理由、インテグループとの出会い、譲渡先とのシナジー、交渉中の心境などについて伺いました。

 

NTTを辞めシリコンバレーへ、そしてITバブル崩壊後に起業

NTT在籍時や渡米に至る経緯を教えてください。

NTT入社後、最初は地方の営業所にいたのですが、希望が通って本社に行きマルチメディアビジネス開発部という部署に所属し、黎明期のITビジネスに関わることができました。私は文系出身ですが、NTTの「文系、理系の差をなくす」という方針によって技術的な仕事もさせていただきました。

NTTで経験を積む中で、最先端のIT企業が集まるアメリカのシリコンバレーに行きたいという思いを持つようになり、ある方から米カリフォルニア州のITベンチャーをご紹介いただいて、1999年にアメリカに行きました。当時、いわゆる華やかなITバブルの後期でした。

帰国後の2001年にデジタリーフを創業なさいました。

はい。ITバブルがはじけたのが2000年です。駄目押しのように、米同時多発テロ事件が起きました。リベラルなはずの西海岸でも、不景気でリストラされるのは外国人でした。外国人のリストラが始まり、私も現地プロジェクトがほとんどなくなり、「日本で市場開拓してほしい」と言われて、日本に戻りました。

日本では名もなき海外ベンチャー企業の名刺を持って営業しても信用されません。その中で仕事を取っていくには要は自分個人の力がすべてです。その中で、自分は大企業で平社員をやり、ベンチャーで管理職を経験したのだから、「イチかバチか、今度は社長を」ということで、日本での起業を決断したのです。

創業当時、ご苦労はありましたか?

起業したのは29歳の時でしたが、良い面と悪い面がありました。良い面としては、当時独身ということもあり、月給8万6000円で1日15時間働くという無茶をしても大丈夫だったことです。悪い面としては、NTTの元同期たちといった昔のつてをたどっても彼らは若手でまだ平社員です。なかなか人脈を仕事に生かせませんでした。NTT時代は地元の愛知で4~5年、東京で3~4年、そしてアメリカでの1年半を経てから帰国したので、東京に地盤がなかったのです。なかなか大変でした。

ただ、ITバブルがはじけたと言われながらも、一方で、ベンチャー文化の「萌芽」と呼ばれた時代で何とかやりくりしてきました。

デジタリーフの規模や事業内容、戦略を教えてください。

従業員数は20名弱です。これまで若手や新卒、インターン、外国人といった人材を育てることに意識を置いてきました。その中から、「伸びる人材たち」が育ち、徐々に会社をけん引してきてくれました。

事業内容はシステム開発やインフラ構築・運用サービスなどです。技術の柱は、ウェブ、クラウド系の開発技術、及び画像処理分野の技術です。エンドユーザとの直接取引を重視する当社では、技術力のみならず、企画力、プロデュース、顧客への対応力などが求められます。

人工知能(AI)などは、今まさにレッドオーシャン化(競争激化)しています。AIのアルゴリズムをゼロから作るには何年もかかります。なおかつ、GAFAといった大手IT企業がいる中で、なかなか勝てるものではありません。レッドオーシャンの中で、あまり技術力を追いすぎると、あっと言う間にブームから取り残されてしまいます。そこで当社はニッチで、かつ、ビジネスに結び付くポイントを押さえながら事業を進めてきました。

 

主力は画像処理技術を駆使した「自動検知型 監視カメラシステム」

デジタリーフの強みを教えてください。

技術力はもちろんですが、当社を特徴づける一番の強みは企画力です。お客様のお困りごと、ニーズに対して、技術の種である要素技術をいかに結び付けてソリューションを組み立てるかというひらめき、アイデアが重要な点で、当社が得意とするところです。

主力商品・サービスと、その誕生の背景を聞かせてください。

主力は防災関連システムです。河川や山などを監視する際に画像処理技術を活用することにより、土砂崩れや河川の氾濫の際に生じる景観の変化を検知して、画像の差分を解析するという仕組みです。画像の色彩、明度、輝度などといった要素を解析、演算する独自のアルゴリズムを開発し、地方部の河川や山間部、建築現場などでの水害、土砂災害、火災といった自然災害の自動検知を行っています。

平成26年に広島で大規模な土砂災害が起き、介護施設が土砂に飲み込まれて何十人も亡くなりました。多発する災害と防災ニーズが高まっていることを踏まえ、さまざまな産業分野における画像解析技術の研究・開発で豊富な経験を持つ当社は、自治体や企業様が手軽で安価に活用できる防災ソリューションを開発、リリースしました。

この「自動検知型 監視カメラシステム」は、独自の画像解析アルゴリズムによって、河川の危険水位への到達や土砂災害等の景観の大規模な変化をリアルタイムで自動検知できるのが最大の特長です。水害や土砂災害を検知すると同時にアラートメールを送信し、利用者はパソコンやスマートフォンを通じてメールに添付された解析画像を閲覧し、現場の状況をリアルタイムに把握すること可能です。手のひらサイズのコンパクトな監視システムなので低コストでのシステム導入、運用が可能になります。

今後も受注拡大が見込まれる商品・サービスと言えますね。

おっしゃる通りです。補足させていただくと、これは小型監視ユニットで構成されるIoT型のシステムだったのですが、約2年前にシステム自体のクラウド化を実現しました。

このシステムを皮切りとして、画像処理システムの開発の幅が広がり、官公庁向けに海上の船を監視するシステムや工場での異常検知など、他の産業分野にも業務が拡大しつつあります。

 

次のステージに行くための選択肢の一つとしてM&Aを検討

業績が伸びた理由について教えてください。

業績が伸びた理由の一つは、オフショア開発です。当社は企画、提案、設計といった上流工程を受け持ち、プログラムを製造するために手を動かすという下流部分をできるだけアウトソーシングしてきました。そのためにオフショア開発を積極的に活用しました。そして会社がある程度の規模になったら、次のステップに進もうと考えていました。

M&Aによる譲渡を検討した背景などについて聞かせてください。

M&Aを考えた理由は、ポジティブな面と、ネガティブな面があります。ポジティブな面は、大手企業と組んだ方が、当社としてより発展・成長できると考えたからです。次のステージに行くための一つの選択肢という位置づけです。

ネガティブな面は、やはり新型コロナウイルスの感染拡大です。そして労働集約的な仕事が中長期的に駄目になると考えたからです。日本のIT企業のほとんどが、人材派遣を活用する労働集約産業に流れていっています。日本のIT企業では、人月単価で仕事を請け負うスタイルが定着してしまっており、結局は企業の体力勝負になってしまう。このことを現場にいて日々、実感していました。

M&Aについて事前に情報収集しましたか?それともすぐにM&A仲介会社に相談なさったのですか?

すぐにM&Aをゴールにしたわけではありません。M&Aはone of themでした。どこかと資本提携、業務提携でもよかったのです。業務内容を労働集約的ではないスタイルに変えてしまうという選択肢もありました。

今、世界では新進気鋭のベンチャーを集めて、コンテスト形式のベンチャー投資をしていく活動が盛り上がっています。どうしても日銭稼ぎに終止してしまう受託開発、SESにどっぷり浸かってしまっている自分自身の「時代遅れ感」への焦りもあり、新しいベンチャーが集うピッチイベントやオープンイノベーションなどの情報収集をする中で、M&Aについてもインターネットなどで調べたりしました。

M&A仲介会社についての印象をお聞かせください。

複数の仲介会社に相談しました。コロナ禍において売上、利益を拡大させていたことを受けて、私はかなり強気の条件を掲げていたのですが、インテグループが一番、業績が拡大し続けていることを評価いただき、私の条件に合わせて対応してくださいました。他社は、条件を聞いてはくれるのですが、「M&Aというのは過去3年の業績の平均値で見ることが常識だから」と妥協を求められたりしました。他のM&A仲介会社が示した条件を見て、無理してまで売ることはないと思いました。

私としては、M&Aは成長戦略の一つの手段だったので、私が納得のいく条件で買い手が見つからなければ、このままやっていこうという考えでした。譲渡は「必須」ではなかったのです。

ご自身の次のステップとは?

ITと国際をキーワードに考えています。グローバル市場でのITを活用した新サービスや人材関連のビジネスを検討しています。私自身が東アジア圏を中心とした新しいグローバルなベンチャーの世界に再度飛び込んでみたいと考えています。

 

求めたすべての条件を満たしてくれた

インテグループに依頼して良かったですか?

もちろんです。インテグループだけが、私が求めていた条件をすべてかなえてくれました。ひとえに、インテグループのおかげです。本当にありがたいです。

インテグループ森山さんの対応について教えてください。

森山さんは成約実績が豊富です。それとレスポンスの早さが助かりました。例えば、社内説明を行うための具体的なアドバイスをメールでたずねるとすぐに返信をくれたのです。レスポンスが早いことで、心理的にも本当に助かりましたし、デューデリジェンスや契約書類のやり取りの際も助かりました。

複数のM&A仲介会社さんと話したことがありますが、なかなかいない人材です。

森山さんから譲渡契約締結の数日前に、寺島さんに連絡があったと聞いていますが。

はい、森山さんから「鹿島神宮にお参りして、無事に譲渡が決まりますようお祈りしてきました」という連絡でした。インテグループもそうですが、森山さんが個人としてしっかり動いてくださったと思っています。

M&A交渉で一番ご苦労されたことを教えてください。

一番大変だったのは、M&A実行までのすべてのプロセスを社内外ともに秘密にしておかなければならなかったということです。M&Aという会社にとって大きな決断を誰にも言えない、相談できない状態なのです。私の公私にわたる悩み事について、森山さんは本当に親身になって相談に乗ってくれました。本当にありがたかったです。

M&Aを検討する経営者にとって、精神的かつ実務的な負担を軽減する方法をインテグループが提供したということですね?

その通りです。それに加えて、買い手であるラプラス・システム社も、当社の実情に配慮し、尊重しながら話を進めてくださいました。とても感謝しています。

 

譲渡先ラプラス・システム社とは高いシナジーが見込まれる

デジタリーフにとって、今回のM&Aの意義を教えてください。

ラプラス・システムとデジタリーフのM&Aは、シナジーが非常に見込まれます。今後も適切な連携と運営が行っていければ、双方にとって伸びる可能性が十二分にあると思っています。本当に良かったです。

ラプラス・システム社への譲渡の決め手は?

「性善説」、「対等」ベースでの対応が、早い段階から鮮明だったことです。そして両社に確固たるシナジーが見込まれ、残る従業員の雇用の維持もクリアしていたことです。ラプラス・システム社だけが「すべて条件をのみます」と言ってくださいました。

譲渡先のラプラス・システム社とのシナジーについて教えてください。

当社が主業務とするウェブ、クラウド系の開発、画像処理系の開発の両方に対して高いシナジーを期待しています。ウェブ、クラウド系の開発については、ラプラス・システム社が今後取り組むグループ内DX化に向けた中心的な技術となり、同社がカバーしていない技術分野を当社が補う形になります。また、画像処理については、先方には太陽光の監視サービスがあり、当社の監視システムを組み合わせるというように、技術面で連携が比較的容易で親和性が高いのです。特に同社は太陽光の計測、監視分野については高いシェアを誇っていますので、テストマーケティングや営業活動が非常に展開しやすいと思います。

今後のプランについて教えてください。

今後の展開としては、ウェブ、クラウド系の開発、画像処理系の開発の両方において両社間の段階的な連携を図っていくことを話し合っています。また、並行して私個人がテーマとする海外展開についてもラプラス社自体が将来の海外展開に対して強いニーズを持っていますので、将来的にこの分野でもあらためて連携しましょうという話をしています。

 

M&Aが実行され、解放感と一抹の寂しさ

譲渡が実行されて、心境の変化はありますか?

解放感と、一抹の寂しさの両方があります。やはり開放感が大きいですね。自分の気持ちの中では、いつまでもアントレプレナー(起業家)でありたいという気持ちがあるのです。60歳になって凝り固まった社長でいるよりは、新しいチャレンジに取り組みたいと思っています。その意味で、またゼロからスタートを切るというスタイルで前を向いていこうと思っています。

M&Aを選択肢の一つに考えている方へのメッセージはありますか?

一つは、思った以上にメンタル的にきついということです。孤独感に耐えられるよう、覚悟した方がいいということです。

それと、自分と会社の価値を客観視することです。自分の希望だけだと絶対にうまくいかないので、自分の感覚だけではなく、経験者に聞いてみるなり、調べてみると、客観的に自分の会社を査定できる方法があります。主観的ではなく、客観的なデータに基づいて、会社のバリューを調べてみるのがいいと思います。

あとは、M&Aで会社を譲渡した場合に、顧客が逃げてしまわないか、社員がM&Aを肯定的に捉えてくれるか、などのリスク面を熟考する必要があると思います。

インテグループ担当者からの一言
会社の発展のための選択肢の一つとしてM&Aを検討・活用した事例
デジタリーフ様は、監視カメラシステムを中心に、多くの上場企業や官公庁向けに開発実績がある企業です。増収増益を続けていましたが、更なる会社の成長・発展のため、M&Aを選択肢の一つとして検討し、最終的にシナジーがある企業に経営権を譲渡された事例です。
弊社では、多くの候補企業をご提案しますので、ベストの相手先を選んでいただくことができます。将来的にM&Aを選択肢の一つとしてご検討されているオーナー様も、是非ご相談いただければと思います。
コンサルティング部
マネージャー 森山克哉