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有限会社シュライン物流

50歳の節目に“大本命”に譲渡を実現……3年越しの経営改善が実を結んだ物流会社

譲渡企業譲受企業
㈲シュライン物流福岡運輸㈱
福岡県福岡県
食品物流食品物流
スキーム 株式譲渡

倉庫作業の人材派遣と食品配送を手掛けるシュライン物流(本社・福岡県宮若市)の長坂晃匡社長(50歳)は2022年8月、主要取引先で食品物流の福岡運輸(本社・福岡市博多区)に全株式を譲渡しました。長坂氏は2001年の創業以来の主要取引先に会社を譲渡できたことに、とても安堵したと言います。創業時からの事業の振り返り、譲渡に至るまでの経緯、今後の展開などについてインタビューしました。

 

個人事業として配送業界に参入

起業前はどのような事業をしていましたか?

もともと個人で鶏肉を配送する物流代行業をしていましたが、取引していた畜産会社の営業所の閉鎖が決まり、仕事がなくなりました。そこで配送業を辞めて飲食業を始めようかと考えていたところ、その畜産会社と取引をしていた福岡運輸の担当者から「配送を手伝ってほしい」と言っていただきました。「僕のような個人が大きい会社と一緒にビジネスができるなら」と決心し、1998年、私が26歳のときに「ワークス」の屋号で個人事業を本格的に始めました。

シュライン物流を設立したのが2001年。どんな経緯だったのでしょうか?

ワークス開業の3年後、法人設立に動きました。倉庫内の作業を請け負う人材派遣事業を始めようと思い、その許可申請のために法人にする必要があったからです。資金がなくて行政書士に頼めなかったので、自分で定款を作成し、公証人役場や法務局に足を運んで、なんとか登記申請をしました。そうして2001年に設立したのがシュライン物流です。社名は、住所に含まれる「宮」を英語にした「Shrine(シュライン)」から取っています。

事業は順調に拡大していきましたか?

しばらく取引先は福岡運輸1社のみで、一蓮托生でビジネスを続けました。成長の起点となったのが、2004年に大手外食チェーン向けの仕事を任されたことです。冷凍倉庫での作業を請け負うため、新たな事業所を北九州市に開設し、作業員やトラックの数も増やしました。

食材の鮮度を保ったまま配送するという需要は年々高まっていました。弊社は配送に加えて人材派遣事業もできるため、倉庫内の品物のピッキングなどの作業も同時に請け負えます。どちらか一方しか手掛けていない会社が多いですが、弊社は両方のノウハウを生かして配送工程の改善や効率化をトータルで提案できます。

この強みを生かして大手冷凍食品会社からアイスクリームのピッキング業務を請け負うなど、福岡運輸以外の取引先も開拓していきました。現在、福岡運輸は売上高の60%を占める主要取引先ですが、ほかに3社と取引があります。

 

タイムリミットは「2024年問題」

会社の譲渡はいつごろから計画していましたか?

ずっと前から私自身の気力・体力ともに最も充実しているうちに資本承継問題は解決しておこうと、おぼろげながら考えていました。それが決心に変わった直接のきっかけは、2019年の家族会議です。2人の息子たちと会社の後継について話し合いました。2人は別の道を志しているとわかり、事業は継がせないことにしました。それ以降、ぼんやりと思い描いていた会社の譲渡を現実的に考えるようになりました。

譲渡に向けて具体的にどんな準備をしたのでしょうか?

まず時期を決めることから始めました。タイムリミットとして考えたのが、運送業界の「2024年問題」です。2024年4月からトラックドライバーの時間外労働時間に上限が設定されます。長時間の労働を抑制する働き方改革関連法による措置です。

会社は1日に運べる荷物の量が減るため、ドライバーの人数を増やす必要があります。そのコストを運賃に価格転嫁するのは難しいので、中小の運送会社の経営環境はかなり苦しくなります。従業員のためにも、何とか2024年より前に規模が大きい企業と一緒にならなければいけないと考えていました。区切りが良いという意味で、私自身が50歳の節目を迎えるのが2022年であり、その年の決算が閉まる9月までに譲渡を完了させようと決心しました。

タイムリミットを決めてから、どう動いたのですか?

2022年9月までという譲渡の時期を見据え、3年前から企業価値を高めるために業績の改善に乗り出しました。たとえば、仕事が忙しくなる前に人材を募集して、逆に閑散期は募集を止めるなど、採用活動にメリハリをつけました。人員の配置を適正にすることで不要な人件費の抑制に努めました。

トラックの確保や配置も改善していきました。弊社は10台以上トラックを持っていますが、数カ月おきに車検や点検のタイミングが来ます。それが重なると費用が一気に膨らんでしまいます。翌年から数年後の車検や点検のタイミング、さらには償却年数なども踏まえて、ディーラーとトラックの代替えの相談をしていきました。そうして車両費用が特定の時期に集中しないように工夫しました。

経営のやり方を見直したのですね。

細かい改善を積み重ね経費をコツコツ削減して利益を出し、決算の数字が良くなるように努力していきました。ゴールを定めて動かないと、前の年までと同じやり方で経営を続けてしまいます。目標を明確にしたことで効率的に会社の業績を改善し、企業価値を高めることができたと思っています。

インテグループとの出会いについて教えてください。

まずは自社の企業価値について意見をもらおうと、インテグループの佐藤優哉さんとお会いしました。2021年10月のことで、同日に別の大手仲介会社1社ともお会いしました。

インテグループと契約した決め手は何だったのでしょうか?

佐藤さんの人柄ですね。もともと誠実な方で、礼儀正しいですし。何より弊社で経理業務を担当している妻と相性が合うだろうなと思いました。税理士さんもそうですが、弊社では金融関係でお付き合いする人は妻との相性を考えて選んでいます。

そして、とても熱意を感じました。面談の後日、「今回のM&Aは私にお任せしてほしい」という内容の手書きのお手紙をいただいたのを覚えています。久しぶりに便箋を見ましたよ。やっぱりその熱意で背中を押されましたね。

 

大本命に迷わず決断

譲渡の候補先を絞り込んでいった流れを教えてください。

2021年12月にインテグループとM&A仲介の契約を結んでからは、佐藤さんにお任せして動いてもらいました。こちらは素人なので、何をどうするかぜんぜんわからなかったので。
「このような会社に打診しました」「この会社から興味があると返事をいただいています」など逐一報告をもらいました。数十社の候補先に打診していただきましたが、資料を開示したり、質問に答えたりしていくうちに絞り込まれていきました。

福岡運輸に譲渡を決めるまで、どんな経緯だったのでしょうか?

大本命は福岡運輸でした。最後まで候補者リストに名前が残っていたときは本当にほっとしましたね。2022年3月に打診を開始して最終的な応募締め切りまで2カ月くらいありました。その間に応募を辞退されて、いつリストから消えるかヒヤヒヤしていました。
最終的に複数社が候補に残っていただいていましたが、創業のきっかけとなった福岡運輸に決めました。

譲渡時はどのような気持ちでしたか?

もともと取引がある会社なので、先方の富永社長とは初対面ではありません。基本合意後に最初にお会いしたときは恥ずかしいような、こそばゆいような、なんとも言えない感情でした。あとは「手を挙げていただいてありがとうございました」という感謝の気持ちが強かったですね。最後の譲渡契約の際には「グループの一員になるので弊社をフルに活用してください」といった思いを伝えました。

譲渡価格について感想を教えてください。

譲渡額は希望金額で決まりました。それを佐藤さんから報告を受けたときには非常に安心しました。長年の取引があり信頼関係を築いていたからでしょうか。3年前の2019年からやってきたことが実を結び、報われたという思いがしてうれしかったです。

 

大手グループで相乗効果を出す

譲渡後の業務計画を教えてください。

シュライン物流という会社を、将来に渡り発展させていくため、まだまだ私が社長としてがんばっていきたいと思います。合理化できるバックオフィス業務等は、福岡運輸のアドバイスももらいながら、適宜進めていく予定です。

事業面ではどのような相乗効果が期待できますか?

福岡運輸は冷凍・冷蔵の食品物流のパイオニア企業です。その大きなグループに入ることで多くのシナジーを生みだせると考えています。トラックの配置や配送の適正化ができれば、高騰する燃料費を抑えられます。対外的な交渉力も増すので調達や仕入れも有利になるでしょう。車両保険の費用圧縮や金融機関からの借り入れコストの削減など、金融面でもメリットを得られると思います。

社内幹部や従業員には、譲渡についてどう説明しましたか?

幹部には譲渡直前に伝えました。長年勤務した会社が譲渡されることに寂しいという意見も出ましたが、「社長が決めたことだから」と理解してもらいました。そして譲渡の次の日に私が各事業所に行き、従業員に直接伝えました。「皆さんの処遇も変わりませんし、大きなグループに入るので安心してください」ということを伝えました。

 

M&Aで大切な心構えとは

改めて譲渡活動を終えた感想を教えてください。

会社を立ち上げるのと同じくらいのパワーを使いました。デューデリジェンスの段階では候補先や専門家の先生方からさまざまな質問・資料依頼が来ます。経費の使い道を聞かれたり、法令の許可証の開示を求められたり。膨大な過去のファイルから該当する資料を探すのはとても手間のかかる作業です。私だけではないと思いますが、譲渡については社内で秘密にしていたので、経理担当の妻だけに協力してもらいました。大変な作業を手伝ってくれた妻には頭が上がりません。心から感謝しています。

最後に、売却を検討している経営者にメッセージをお願いします。

M&Aで大切な経営者の心構えは「誠実・清潔・素直」の3つだと思います。会社の企業価値を最大にするのは、やはり創業者である社長個人の心構えと覚悟です。この3つのキーワードは、ぜったいに重要な金言だと思いますね。

デューデリジェンスでは候補先の企業から会社の事業内容や業績について厳しくチェックされます。ときには交際費の内訳まで見られるでしょう。そのときにプライベートな飲み代など、説明ができないようなものがあればマイナス評価とまでは言わないまでも、社長そのものへの印象となってしまうかもしれません。

私はやましい経費の使い方はしていなかったほか、譲渡に向けて計画的に会社の業績を向上させ、決算の数字を良くしていきました。佐藤さんに初めて決算書を見せたとき、「キレイな会社ですね」と言われたのがうれしかったですね。覚悟を決めて「誠実・清潔・素直」な企業経営に努めた結果、福岡運輸にも自信を持って会社を譲渡できました。

インテグループ担当者からの一言
手塩に掛けて育てた物流会社を、主要取引先に譲渡。大手グループの協力会社から大手グループの一員となった成功事例
シュライン物流様は、大手物流会社複数社の協力会社として、冷凍・冷蔵倉庫内の作業員の派遣業務から運送業務までを、一手に引き受ける総合食品物流会社です。
創業時から奥様や役職員の方々と共に、安定した収益を実現してきましたが、物流業界を取り巻く2024年問題や、将来的な後継者不在をご理由に、会社の更なる成長と発展を想い、M&Aをご決断されました。
お相手は、得意先である福岡運輸様で、お互い旧知の関係であるが故、センシティブな交渉はしづらく、そこに弊社が仲介として入り交通整理をすることで、最後までトラブルなくM&Aを実現することができました。
コンサルティング部
シニアマネージャー  佐藤優哉