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不二商株式会社

企業売却は「バトン渡し」-新しいリーダーに発展の道を託す

譲渡企業譲受企業
不二商㈱ヘイワオートサービス㈱
神奈川県静岡県
電気冷凍冷蔵車の製造業冷凍冷蔵車の販売・修理事業
スキーム 株式譲渡

電気冷凍車の製造・販売やカーエアコンの部品販売などを手掛ける不二商(本社・神奈川県厚木市)の山田勝彦元社長(現会長、66歳)は2021年11月、食品配送を主業とする物流企業の傘下で、冷凍冷蔵車の販売修理等を行うヘイワオートサービス(本社・静岡県浜松市)に全株式を譲渡しました。1969年に父が創業した会社を育て守ってきた山田氏は、後継者不足とコロナによる環境の変化でM&Aを決意したといいます。創業の経緯や譲渡に至るまでの紆余曲折、そして現在の心境をうかがいました。

 

父の会社を受け継ぎ「電気冷凍車」を開発

不二商では、現在電気冷凍車の製造・販売をビジネスとして展開していますが、まずは創業の経緯を教えてください。

弊社は1969年に、私の父が創業しました。創業初期の主な仕事は、後付けカーエアコンの部品販売です。若い方にはなじみがないと思いますが、当時は自動車にエアコンはついていなくて、助手席の前に置く箱型の後付けカーエアコンが発売されると、それが飛ぶように売れていました。それで、その構成部品をアメリカから輸入するなどして販売していたんです。

しばらくすると、国内の自動車メーカーでもカーエアコンが標準装備されるようになりました。そこで今度は創業第2期の仕事として、そのカーエアコンが壊れたときの補修市場(アフターマーケット)に狙いを定めて、交換部品や修理部品の輸入、製造を始めました。修理屋さんに対して、純正品と同じものを安く、高品質で提供するビジネスです。

私が勤めていた東海銀行(現三菱UFJ銀行)を退社して、“家業”である不二商に入社したのが1988年、32歳のころで、まさにこの創業第2期の真っただ中でした。
さっそく海外からの部品の買い付けや、国内外の工場での部品製造に奔走する日々を送ることになりましたが、当時、私たちほど交換、修理部品の品ぞろえが充実していた会社はなかったと自負しています。

その後、現在のメイン事業である電気冷凍車の製造・販売を始めたのが15年前。なにか、きっかけがあったのでしょうか。

電気冷凍車は、私が社長になってから始めた事業です。好調だったアフターマーケットでしたが、自動車メーカーが、ディーラーや系列サービス店の囲い込みを強化していくなかで、少しずつ仕事が減っていきました。

そこで次に目を付けたのが、コールドチェーンビジネスです。おいしい食材を冷凍・冷蔵して鮮度を保ったまま運ぶというニーズは、これからますます増していくだろうと考え、冷凍車市場への進出を目指したのです。この市場はすでに大手企業が支配していましたが、2トン以下の小型車両にはチャンスがありました。こうして、いまにつながる創業第3期の電気冷凍車事業が始まったのです。

不二商の電気冷凍車の特徴や強みは、なんですか?

一般的な冷凍車は「機械式」や「直結式」と言われているもので、基本的にエンジンの動力を使ってコンプレッサーを回して冷やしています。もともとカーエアコンの発展形としてできたものです。
しかし後発の私たちは、同じことをやっても仕方がないということで、電動のコンプレッサーを使って冷やす仕組みをやることにしました。つまりバッテリーの電力を使ってコンプレッサーを回して冷やします。

この仕組みだと、エンジンの動力を奪わなくて済むので、自動車の燃費性能や登坂性能が損なわれることはありません。特に小型車両では、エンジンから少しでも馬力が失われると走行性能に大きく影響するので、電動にすることによる効果が出やすいのです。お客さまからは、「坂を登るときに、目いっぱいアクセルを踏み込まなくてもよくなった」とか「燃費が15%以上改善した」という嬉しいご意見を頂戴しています。

また、一般的な冷凍車はエンジンを切ると冷やせなくなりますが、弊社の電気冷凍車は100ボルトの電源につなげば、どこでもそのまま冷蔵庫代わりに使うことができます。夏の屋外イベントや、後日配送する荷物を冷やしたまま保管したいときなどにも便利です。

 

いつかは譲渡しようと思っていた

銀行に勤めていた山田さんが会社を継いだのは、なぜですか?

父が創業した1969年当時、私は中学生でした。創業して間もなくは、母も手伝って2人で朝から晩まで働いていました。私は家の手伝いをしながら、そういう両親の姿をずっと見ていたのです。小さいけれど、すごく儲かっている会社だったし、長男として、果たして他人に渡していいのかなと考えるようになりました。勤めていた銀行ではドイツ勤務でしたが日本に帰ってきたタイミングで会社を継ぐことにしました。

その会社を今回、譲渡しようと考えたきっかけは何だったのでしょうか?

3~4年前にこの会社の将来、電気冷凍車の未来を考えたときに、60歳を過ぎた私がリーダーとしてやっていくのが本当にいいのかと漠然と考えるようになりました。子どもたちはすでに別の道を歩んでいますし、社内にも後継者はいない状況でしたから、どこかで会社の譲渡を考えなければならないという意識もありました。

それに加えて、このコロナ禍です。私どものいちばんのお客さんは、市場のお魚屋さんやお肉屋さんなのですが、彼らがコロナ禍で壊滅的な打撃を受けました。それによって、うちの冷凍車を10台、20台と使ってくれていたお客さんが、ぱったりと全部なくなってしまって。こうしたコロナによる売上の減少が、具体的に譲渡を考えるきっかけとなりました。

両親から受け継いで守ってきた会社を他人に譲渡することへの葛藤はありませんでしたか?

最初から、子どもたちに継いでほしいとは思っていなかったので、特に葛藤はなかったです。妻と子どもたちも株主なので、譲渡を考えてからすぐに相談しましたが、みんな納得していました。もともと、いつかは譲渡しなくてはいけないと全員がわかっていたので。

今回、インテグループの仲介で譲渡が決まりました。その間、どのような心境でしたか?

「本当に決まるのかな?」「お相手が現れるのかな?」という不安だけがありました。インテグループの担当の手島さんから、逐一、買い手さまを紹介していただき、面談や工場案内をさせていただきました。
結果として、インテグループさんに相談してから5カ月間で譲渡成立となりましたが、想定していたよりも早く、すべてがスムーズに行った印象でした。

最終的に、静岡県で冷凍冷蔵車の修理を手掛けるヘイワオートサービスさんへの売却が成立したのが2021年11月。この会社は静岡県の物流企業のグループ会社です。譲渡先を検討するなかで心がけたことや、決め手となったことを教えてください。

私たちのような小さな規模の会社でも、企業文化やカルチャーがあります。私が以前いた東海銀行は、三和銀行と合併してUFJ銀行となり、その後、東京三菱銀行と合併して三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)になりました。私は銀行時代の仲間から合併後に文化の違いで苦労した話を詳しく聞いていたので、企業が一緒になるなら、まずカルチャーが近くなくてはいけないと思っていました。

その点、ヘイワさんは、社長を務める水谷(欣志)さんが信頼の置ける方ですし、担当者の方に会った瞬間に、企業文化が近い会社だという印象を持ちました。
またヘイワさんは業態が近く、シナジーが生まれやすいとも思いました。工場見学で私たちの技術力を高く評価してくださったことも、売却させていただく決め手となりました。

従業員の人たちには、どのように伝えたのでしょうか。

従業員には、実際に譲渡が決まってから伝えました。彼らもコロナで受注が減っているなかで、少なからず会社の未来に不安を持っていたと思います。彼らには、ヘイワさんのような大きなグループの一員になったほうが不安は少ないこと、企業文化も近いので一緒にやっていける会社さんだということを話しました。従業員は株式譲渡後も残って、しっかり働いてくれています。

 

さっそくシナジーが生まれている

譲渡後、ヘイワオートサービスさんとの連携はうまくいってますか?

思った通り、ピースが合っています。たとえば、ヘイワさんでは、冷凍車の販売もやっておられますが、早速、その販売ルートに弊社の電気冷凍車を載せて頂くことで話を進めています。仕事をしやすい環境ができていますし、シナジーはわりとすぐに生まれたと思います。

山田さんは現在、どういった立場で関わっているんですか?

いまは譲渡後、最長2年の継続勤務期間で、会長という立場で関わりながら引継ぎを行っています。すでに、管理業務や部品の販売業務などはヘイワさんへ引き継ぎが完了しました。残っている大きな仕事は、私の仕事の中心である営業の仕事です。
弊社は製造した車両を直接、鮮魚店さんや精肉店さんなどに販売していますが、それらはすべて私が飛び込みで営業して開拓し、信頼関係をつくりながら、少しずつ販路を広げてきたものです。この2年間で、それらのお客さまをすべて受け継いでいける人間を採用して、引き継ぎ業務を完了させようと思っています。

今後は、どういう会社になっていってほしいですか?

この仕事は、本当に面白い仕事だと思うんです。いま世の中は、電気の時代に向かっています。かつて汽車が電化されて電車になりましたが、いま自動車も内燃機関から急速にEV化が進んでいる。そうしたときに、エンジンの動力を使う「機械式」や「直結式」は対応できません。つまり車両用の冷凍機器も、電気で動く仕組みにならざるを得なくなっているのです。

そういう時代が来たときに、私たちの会社は絶対に面白いことになると思っています。弊社は、まだ誰もやっていない15年前に、この流れを冷凍車に持ち込みました。いまの弊社の基礎技術を応用・発展させれば、EV用の冷凍機は比較的簡単に実現できるはずです。そうした方向で、どんどん発展していけばいいなと思っています。

 

M&Aに対するネガティブなイメージをなくした

今回、仲介会社にインテグループを選んだ理由についても教えてください。

株式譲渡の経験がある方に口コミで教えてもらったり、インターネットで調べたりして、インテグループさんを含む4社の仲介会社を比較しました。その中から選んだ理由は、M&Aに対する考え方がとても素敵だと思ったからです。ホームページに書いてあることを何回読んでも、この会社の考え方がいいなと思いました。

具体的に上手く言えるかわからないですけど、インテグループさんは売り手側の気持ちを考えてくださる企業だと思いました。それは、ほかの仲介会社が最低報酬を高めに設定しているのに対して、最低報酬も低く、かつ着手金・中間金なしの完全成功報酬制にしている料金体系にも表れていると思います。

担当者の対応には満足していますか?

担当してもらった手島さんの誠実な人柄、レスポンスの早さや的確さには舌を巻きました。のちに大学の後輩だとわかったのですが、それで褒めているわけではありません(笑)。人間的な波長も合いましたし、なにより彼は相手のことを思って、ときには言いづらいこともビシッと伝えてくるんですね。そういうプロフェッショナルなスタンスも、M&Aの仲介においては大事な部分だと思います。価格も希望条件通りに売ることができて、感謝しかありません。

最後に、いま会社の譲渡を検討している経営者へのメッセージをお願いします。

M&Aと言えば、以前は「ハゲタカ」なんていう言葉もあって、どちらかというとネガティブな印象が強くあったと思います。また、会社を売ることに“敗北感”を持つようなイメージもあるかもしれません。私自身以前は、そういうイメージを持っていましたが、実際に自分が会社を売ろうと思ったときに考えたのは、「誰かいい人に、この会社を引き継いでほしい」ということでした。

経験してわかりましたが、M&Aは決して悪いことではありません。M&Aは、新しいリーダーに新たな発展の道を託すことです。そして従業員さん、顧客の皆さん、そして社会に対する“バトン”を渡しているんだと考えたらどうでしょうか。

インテグループ担当者からの一言
技術力を磨き上げた企業が、親和性の高い近接業種に譲渡した成功事例
不二商様は、コロナによる環境の変化がありながらも、「電気駆動」の冷凍冷蔵車という他には無い技術力をお持ちで、譲渡活動の中でもこの点が高く評価をされていらっしゃいました。
インテグループでは、不二商様のような高い技術力は有している一方で、後継者にお悩み、あるいは更なる成長・発展を目指す会社様のM&Aを全力ご支援致します。将来の選択肢の一つとして、是非お気軽にご相談ください。
コンサルティング部
マネージャー 手島幸輝