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株式会社IPH

大震災、コロナ禍を乗り越えたホテルがスピード譲渡できた成功体験とは

譲渡企業譲受企業
㈱IPHブリーズベイホテル㈱
福島県神奈川県
ビジネスホテル運営ホテル運営・再生
スキーム 株式譲渡

いわきプリンスホテルは創業34年、125部屋の客室を有する福島県いわき市内のホテルです。このホテルを運営するIPH(本社・福島県いわき市)の社長・原田雄介氏(46歳)は、2024年1月に全株式を、ホテル業とホテルの買収再生業を営むブリーズベイホテル(本社・神奈川県横浜市)に譲渡しました。M&Aを終えた原田氏に、いまの心境や決断の背景を伺いました。

 

東日本大震災で「営業継続」の決断

まずは、いわきプリンスホテルについて教えてください。

このホテルは、いまから35年前の1989年に、私の祖父が建てたものになります。私は2013年に父から引き継いだ3代目。引き継いだタイミングで株式会社IPHを設立しました。

このホテルの魅力は、この辺りの宿泊施設のなかでも高速道路からもっとも近い好立地にあることや、目の前に大型スーパーがある便利さが挙げられます。また、スイート、ツイン、ダブルの全室は壁に秋田県産、大分県産の珪藻土を塗っているため、吸湿効果や消臭効果があり、アトピーやぜんそくを持つ人も安心して利用できます。

ホテルに入ると、創業34年とは思えないほど綺麗で驚きました。

建物は劣化するので、メンテナンスにはこだわってきました。配管やエアコン、排水溝の裏側や換気扇、トイレなど、とにかく人が普段見ない所まで綺麗にしていましたね。
新型コロナウイルス感染症の宿泊療養施設として約2年間県に貸し出していたのですが、その間も欠かさずにメンテナンスを行っていたほどです。

宿泊客とのエピソードで思い出に残っていることはありますか?

それはもうドラマだらけで、語りつくせないほどたくさんの思い出があります。
1つだけ挙げるならば、2011年の東日本大震災のときのことは忘れられません。あのとき、いわき中のホテルが営業を中止して撤退しましたが、私たちは原発による避難指示が出た3月16日まで営業を続けました。

水道が止まっていたので、お客さまと一緒に貯水タンクに水を汲みにも行きました。「水をなるべく節約しよう」と励まし合って、「水はないけど、お酒ならありますよ」と1階のレストランでお酒を振る舞って。一緒にお酒を飲んだら、「酔っぱらったからもう怖くない」と言って、部屋に戻って行く人もいました。

その方たちがご自分の地元に無事に帰れたときに、「あのとき、営業を続けてくれてありがとう」と感謝を伝えてくださったんです。未来がまったく見えないときにいただいたその言葉は、本当に嬉しかったですね。

営業をストップしない決断は、みなさん、心から助かったでしょうね。

撤退しない選択をした、このホテルだけができた経験だと思います。また、この建物がそれだけ丈夫につくられている証にもなりました。

震災が生んだストーリーがもう1つあって、地震の影響でホテルのまわりの地盤が50センチほど沈んだんです。そのおかげで、2019年にいわき市が台風の甚大な被害を受けたときに、このホテルは洪水から守られました。その50センチがなければ、ここも床上浸水していたのです。

そのときは水道も止まらなかったので、近隣の方のために、すぐにこのホテルを給水場にしました。看板を立てて「お水どうぞ」と。そうやって、人助けになることができたのはよかったと思います。

ホテルの経営をしてきてよかったと思いますか?

20歳のときにアルバイトとして働き始めて、その後、社長になりました。経営が苦しい時期も長かったので、延べ10年以上はこのホテルに住みこみ、通常は2人で行うナイトフロントを毎日1人で行って、人件費を切りつめてきました。

それくらい私の人生はこのホテル経営のことしかなかったので、これを「悪かった」と言うと人生を否定することになってしまいます。壁にぶつかり、つらい思いをしたこともたくさんありましたし、自己破産を考えたことも一度や二度ではありません。でも、いま振り返ってみると、「壁にぶつかることが楽しかった」とも思えています。

「M&Aは縁」をつくづく実感

今回の企業譲渡を決断した理由を教えてください。

新型コロナウイルスの蔓延後は本当に経営状態がまずく、「もう来月には自己破産しよう」というところまで行きました。
でも、2021年から宿泊療養施設として県に貸し出すようになり、その後の2年間でなんとか綺麗に黒字化することができました。そして2023年5月に療養施設契約が終了したので、この勢いに乗ったまま譲渡するのがベストなタイミングだと考えていました。

最初はインテグループではないM&A仲介会社を選んだと伺っていますが、その理由はなんだったのでしょうか?

インテグループの堤くんとは、実は以前からの知り合いでした。堤くんがいわき市の別の企業のM&Aでこちらに通っていたときに紹介で知り合って、仲良くなったんです。そのときから印象はよかったのですが、お付き合いのある会計事務所から別の仲介会社をご紹介いただいたため、最初はその会社に依頼しました。

ただ、実際にその会社と契約をすると、レスポンスの遅さが非常に気になったんです。こちらは5月以降、譲渡するつもりで営業を制限していたので、早くしないと経費だけがかかって大きな損をする。それにも関わらず、対応が遅かった。「上司の決裁を仰がないといけない」と言っていましたが、それでは仲介人として困ります。
「この遅さではもう無理だ」と思い、やっぱり堤くんとやろうとインテグループさんに切り替えることにしました。

仲介契約後のインテグループの印象はどうでしたか?

堤くんはとにかくレスポンスが早いし、悪い点が1つも見当たらなかったです。こちらの要望や想いも親身に聞いてくれるし、伝わりづらいことを言っても理解力が高く、自分で判断をしてスピーディに動いてくれました。

2023年秋にインテグループと仲介契約を結んでから、翌年1月に譲渡が完了しています。譲渡までの経緯も教えてください。

買い手であるブリーズベイホテル様は、いわき市内ですでに複数のホテルを経営していたため、いわきプリンスホテルにも興味を示してくれる予感がしていました。
だから、以前相談をしていた不動産の仲介会社にも「ブリーズベイホテル様に声をかけてほしい」とお願いしていたのですが、対応していただけませんでした。

でも堤くんはスルーせず、むしろ「社長とは以前からコンタクトがあるので、すぐに聞いてみます」と、津田則忠社長に直接連絡してくれたんです。そして、津田社長がすぐに会いに来てくださり、ホテルの内覧もして、気に入っていただくことができました。さらに、こちらの「早く譲渡したい」という希望も汲んでくださりました。

譲渡を終えて、今回のM&Aには満足していますか?

満足という言葉では不適切なくらい、感謝、大感謝です。大きな感動を味わわせていただきました。最終的な金額面も、会社が抱えていた負債ごと譲渡させていただくことができ、さらにそのうえで個人に残る資産としても納得のいくものでした。

振り返ると「M&Aはご縁なのだな」と思っています。堤くんと私の出会いもご縁だし、堤くんがブリーズベイホテル様とコンタクトがあったこともご縁。「M&Aって、ご縁で決まるのだな」と思いました。

譲渡後は「趣味のサーフィン三昧」

譲渡後のいま、ブリーズベイホテル様には、いわきプリンスホテルをどんなホテルにしてほしいと思いますか?

ブリーズベイホテル様は地域密着で、地域とともに発展していくホテルを目指しているとのことなので、本当にその通りにやってほしいと思います。
津田社長は、初めてお会いしたときからとても気さくで「こういう方と仲良くなりたい」と思える方でした。全国でも数百軒のホテルを運営されていますし、この方だったら、このホテルや従業員のことも守っていってくれると安心しています。

従業員たちの雇用および処遇の維持は、こだわっていたそうですね。

いま働いてくれている従業員は、本当に優秀で人としても大好きな人たちでした。だからこそ、ブリーズベイホテル様にも雇用条件の維持はお願いさせていただきました。
従業員のみんなには今回の譲渡をそれぞれ個別に伝えたのですが、嬉しかったのは、みんなが私に向けた寄せ書きをくれたことです。正社員の2人から渡していただいたんですけど、そのときは自然と涙があふれて、従業員とハグをしてしまいました。

原田さんは譲渡後に会社に残らないそうですが、今後はどういったことをするのでしょうか?

津田社長に会社譲渡後のことを聞かれて「サーフィン三昧です」と言ったら、「こんな前向きなM&Aはなかなかない」と、すごく喜んでくださいました(笑)。落ち着いたらまた起業するつもりでいますが、この何十年間ホテル経営のことだけ考えて生きてきたので、まずは趣味のサーフィンをして、のんびり過ごしたいと思っています。

また、本を書いてみたい願望もあります。自分はかつて人を育てることが苦手で、財務諸表も読めない本当にダメな経営者だったのですが、経営の師と言える方と出会い、その方の厳しい指導を仰ぐことで少しずつ変わっていくことができました。だから、自分のように苦しんでいる経営者の光になれるような本を書いてみたいと思っています。

それでは最後に、売却を検討している経営者に向けてメッセージをお願いします。

会社にも旬というものがあると思うので、売るタイミングを逃さないことが大切だと思います。また、アドバイスを送らせていただくとすれば、「堤くんなら間違いない」ということです。堤くんに任せれば、私のように大感動することもあるかもしれません。

M&Aという言葉の響きに、なんとなくネガティブなイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、私自身が経験してみて、まったくそんなことはありませんでした。むしろ、前向きに自己資産を増やすことができる手段として、M&Aをとらえていただくといいと思います。

インテグループ担当者からの一言
東北地方の老舗ホテル業がスピード譲渡を実現した成功事例
IPH様は、東日本大震災やコロナ禍において地域のインフラとしての役割も果たしてこられたビジネスホテルの運営会社です。2023年5月に新型コロナウイルス感染症患者の宿泊療養施設としての運営が終了したため、将来的に後継者が不在であることも見据え、第三者への譲渡を決断されました。
ブリーズベイホテル様は、全国で各種ホテルの運営や再生を手掛ける会社です。いわき市内でも複数のグループホテルを有するため、ホテル間での人員やノウハウの共有が可能であり、お互いに更なる成長が見込める良いマッチングとなりました。
コンサルティング部
シニアマネージャー  堤 瞭