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有限会社ID・アーマン

「おカネ」よりも「考え方」を大事に…一度は廃業を考えた保育園運営会社のM&Aという選択

譲渡企業譲受企業
㈲ID・アーマン㈱リビングプラットフォーム
千葉県北海道
保育園の運営介護施設及び保育園の運営
スキーム 株式譲渡

千葉県内で保育園を運営する有限会社ID・アーマン(本社・千葉県市川市)の創業社長・仲谷修氏(71歳)は、2022年1月に保育や介護、障害者支援事業を行う株式会社リビングプラットフォーム(本社・北海道札幌市、東証グロース上場)に全株式を譲渡しました。自身が70歳を過ぎ、後継者も不在というなかで、どういう考えでM&Aの成立に至ったのか――その決断の理由をうかがいました。

 

創業のきっかけは「地域の課題に気付いたから」

創業の経緯を教えてください。

創業は1988年3月1日です。千葉県市川市行徳の自宅から歩いて5分くらいのビル1階で認可外保育園「ブルゥミング保育園」(2007年からブルゥミング幼保園に改名)を開園しました。私は行徳で生まれ育ち、PTAや自治会の会長もやっていたこともあって、地域と深い関わりがありました。そんなある日、近所で4歳くらいの男の子が行方不明になってしまうという事件が起きたのです。地域のみんな総動員で探し回りましたが、なかなか見つからない。結果的にはスーパーで遊んでいるところを無事に発見できたのですが、その原因は両親が共働きで小さい子どもがひとりで留守番させられていたことでした。

そのとき、「これは地域の大きな課題ではないか」と感じました。当時はまだ「待機児童」という言葉が一般的ではなかったころです。私にとって、生まれてからずっと住み続けている大切な地元ですし、「地域のために、こうした子どもたちを預かる保育園が必要だ」と思ったのです。

私はもともと、父親がやっていた会社で働いていましたが、その会社も畳むことが決まっていたので、なにか新しくビジネスをやろうと考えていたところでした。そこで、この分野にはまったくの素人でしたが、保育園事業を始めることにしたのです。

事業は始めから順調でしたか?

最初は苦労の連続でした。家賃が月35万円、人件費が月45万円……合わせて80万円が毎月の固定費としてかかりました。ところが、肝心の園児がまったく集まらない。当時はまだ、認可外保育園というのが一般的ではなく、しかも、できたばかりの名も知らない施設に大事な子どもを預けるかというと、なかなかハードルが高い。そもそも、保育園に入りたい人は役所を通して家の近くの認可保育園に行くのが普通です。だから、最初の3カ月の入園児はゼロ。認可外で子どもを集めるのは、想像以上に大変でした。そういうことも知らずに始めてしまったんですね。

4カ月目からは1人、2人と入ってくるようになりましたが、先の見通しも立たないなか、円形脱毛症にもなって生きた心地がしなかったですね。1年経ったころには、園児もようやく15人程度に増えて一安心となりましたが、それも束の間でした。すぐ近隣に認可保育園ができたことで、再び入園児がゼロに近くなってしまったんです。立ち上げのころは、こうした困難の繰り返しでしたね。

そこから、どうやって事業を軌道に乗せたんですか?

園児獲得のために考えたのが、習い事を組み合わせた独自のカリキュラムを組むことでした。お習字やスイミングスクール、英会話、小学校に向けた国語や算数の勉強といった学習の時間をカリキュラムに入れました。ここに来れば、子どもを預かってくれるだけでなく、多様な学習ができるという、ブルゥミング幼保園ならではの大きな特徴を作ったのです。こうした学習カリキュラムは認可外だからできることで、様々なルールに縛られた認可園ではできません。そのぶん、月の保育料に約1万円の上乗せになりますが、子どものために良い教育を受けさせたいと思う家庭が預けてくれるようになりました。

認可園は家から近いから通うわけですが、認可外の場合は少し離れたところに住んでいても、目的意識を持って選んで来る人が多くいます。ブルゥミング幼保園には、2駅くらい離れたところからはもちろん、東京の江戸川区から来る方もいました。5年経ったころには事業も軌道に乗り、会社を設立しました。

そのタイミングで規模を拡大したんですね。

それまでは25人程度の定員でしたが、手狭になったのでもっと大きい場所をと考えました。そこで自宅を壊して新しく保育園を作って、定員は90人に。それなりに広い庭もあるので、小さい子は外を散歩させずに、園内だけでじゅうぶん遊ぶことができる。大きい子たちは外にも出ますが、すぐ目の前に大きな公園があるので、そこで事足ります。そうした安全面も園の特徴のひとつになっています。

その後、2017年には船橋市に認可保育園を設立しました。経営的には非常に安定していますが、認可園というのは基準が厳格なので特別なことはできません。認可と認可外の両方の保育園をやっているところはあまりないと思いますが、両方の違いを感じる場面も多く、非常に面白いです。

 

事業継承を考えた理由

会社の譲渡を考え始めたきっかけはなんですか?

きっかけは私が70歳を迎えて、そろそろ事業を続けるのもしんどいなと思い始めたからです。うちは子どもたちも事業を継ぐ気がなかったので、最初は廃業を考えました。M&Aなんていうのは、まったく知識がなかったので頭にありませんでした。

ところが、ふつうのお店とかだったら「今月で店を閉めます」と張り紙しておけばいいでしょうが、保育園の場合はそうはいかない。子どもたちを預かっているという責任がありますから、単純に「もう園は閉じます」というわけにはいかない。どうしたらいいのかと頭を悩ませるなかで、事業承継のためのM&Aの存在を知りました。

なぜインテグループを選んだのですか?

最初に連絡したのは別の会社でした。でも、なんとなく反応が悪くて……。何社かとコンタクトを取りましたが、そのなかでもインテグループは実績があるので安心できました。信頼が置けそうな会社かどうか、というのが1つ目のポイントでした。

加えて、担当者の加瀬裕也さんとすごく馬が合ったことも大きかった。こればかりはどうしてかと聞かれても困りますが、フィーリングが合ったんでしょう。話していて疲れない。成約するまでは2日に1回くらいは連絡を取っていました。数カ月にわたって密に接するので、やはり担当者の方と合うかとどうかというのは大きいのではないでしょうか。

「この会社なら任せられる」と思った

譲渡に際して何を重視しましたか?

私の出した条件としては、なによりも従業員をそのまま残してくれることでした。待遇を据え置いてくれることに加え、私の右腕だった職員は業務過多だったので負担を軽減してくれるようお願いしました。結果、譲渡してから辞めた職員は1人もいません。

もちろん同様に重要なのが、子どもたちのことです。大切なお子さんを預かっている責任がありますから、突然経営者が代わってサービスの質が落ちたといったことがあってはなりません。その点、今回の譲渡では、保育園の名前はもちろん、運営主体の「ID・アーマン」という社名も残って、そのままリビングプラットフォームさんの傘下に入る形になりました。社長が私から代わるだけで、事業が変わらずに継続できていることは非常に嬉しいです。

リビングプラットフォームさんをお相手に選んだ理由はなんでしょうか?

私が出した条件を了承した上で最終的に金額を提示してくれた4社のうち、実はリビングさんの提示額が一番高かったわけではなかったのです。しかし各社に伺って、対応してくれた社長や役員の方々と触れて、直感的に「この人たちだったら任せられる」といちばん感じさせてくれたのがリビングさんでした。私は各社のことはほとんど何も知りませんでしたから、経営陣との相性で選んだ面が強いです。

従業員の人たちには譲渡のことをどのように伝えましたか?

実際に譲渡が決まる少し前に初めて伝えました。仕事の環境は変わらないように話を進めていたので、従業員に対しては余計な不安を感じさせないように配慮しました。実際、経営が代わって辞めた従業員がいなかったというのは、本当によかったです。

 

経営を退いても自分が作った事業が続く

今後、リビングプラットフォームさんに期待することはなんでしょうか?

認可園のほうは経営的に安定していますが、逆に認可外の経営は業界的に難しくなってきています。社会的に大きな問題となった「待機児童」に対処するため、認可園が整備されてきているからです。園児を確保するためには、今後ますます、カリキュラムや宣伝などでアイデアが必要になってくるでしょう。ただ一方で、認可園にはできない特徴的な保育園運営ができる、という意義は変わりません。リビングプラットフォームさんには、ぜひその辺りのことを期待したいです。

改めて今回の譲渡を振り返って、いまどう考えていますか?

私にとっては、会社を譲渡して本当によかったです。大満足しています。廃業しかないかなと思っていたけれど、M&Aというものがあると知ってうまくいきました。廃業するならば、建物を壊すおカネもかかるし、保育園もなくなってしまう。なにより子どもたちの元気な声が聞けなくなってしまうというのは寂しいですから。自分は経営から退くけども、自分の作った事業が、これまでと同じように継続していくというのはとても嬉しいことです。

それに、売れるタイミングでないと事業継承はできません。買う側も「買い時」でないと事業をうまく継続できないでしょう。事業がダメになってしまってからでは売却もできないし、廃業すると子どもたちにも迷惑がかかってしまう。本当にいいタイミングだったと思います。

今後はどうする予定ですか?

譲渡から半年後の6月までは顧問という肩書きで、園にも頻繁に顔を出してきましたが、今後どうするかは考えているところです。職員や子どもたちの様子を見ていると、経営が変わっても雰囲気は何も変わっていないので安心しているところです。

まずは、すでにリタイアしている友人たちと平日に趣味のゴルフにも行きたいなと思っています。

最後に今後、会社の譲渡を考えている人たちへのアドバイスをお願いします。

会社の譲渡を考えている方は、事業への愛着もあるでしょう。ですから、おカネのことだけでなく、売却先の経営者の方々がどういった考えなのか、自分の作った事業を大切にしてくれる会社なのかということを大事にしたほうがいいと思います。そのためにも売却先は1社に決めずに、何社かと面談して決めたほうがいいと思います。

インテグループ担当者からの一言
創業社長の思いを最も理解して頂いた大手企業に、安心して経営を引き継いだ事例
ID・アーマン様は認可保育園1園と認可外保育園1園を運営されておりました。
仲谷社長は、園児や保護者、働く保育士のすべてが安心できる相手に譲渡したいという思いが強く、最も仲谷社長の思いをくみ取り、親身に対応してくださったリビングプラットフォーム様(東証グロース上場)への譲渡を決断されました。
本件は、M&Aの活用により、売り手は廃業を免れて事業を承継することができ、買い手は保育事業の規模とエリアを拡大することができた事例です。双方のご希望の実現に微力ながらお役に立てたのであれば幸いです。
コンサルティング部
シニアマネージャー  加瀬裕也