
- M&A基礎知識
M&Aの手法
M&Aの方法は、大きく分けて「買収」「合併」「分割」の3種類に分けられます。 また、これらの方法はさらに「株式譲渡」「事業譲渡」などの手法に分類されます。
2025.12.24 更新

M&Aでよく新聞などで大きな記事になるのは、たとえば、上場企業に対する「敵対的TOB」(株式公開買付け)や「クロスボーダーM&A」(日本企業による海外企業の買収、海外企業による日本企業の買収)、あるいは大手メーカーが子会社を外資系ファンドに売却し某投資銀行がファイナンシャル・アドバイザーを務めたといったようなものです。
しかし、このようなM&Aと、近年の事業承継問題などを背景とした「中小企業のM&A」とは世界が違います。
中小企業のM&Aは、国内企業同士による友好的M&Aで、仲介会社が関与することが多く、大企業とは異なる中小企業特有のリスクがあります。
ここでは、中小企業M&Aの以下の4つの特徴について、一つずつ解説します。
経営者の中小企業のM&Aにおいては、「敵対的買収」や「乗っ取り」は基本的にはありえません。
そもそも敵対的買収の「敵対的」とは誰に対して敵対的かというと、経営者等の経営陣に対して敵対的ということです。つまり、敵対的買収とは、経営者等の経営陣が反対しているにもかかわらず、買収をしかけることです。経営陣が反対しているにもかかわらず、買収が成功するときは、売り手の株主が賛成して株式を売り渡す場合です。
このような敵対的買収は、株主と経営陣が別で、いわゆる(株式の)所有と経営の分離が行われている上場企業などにおいて、はじめて起こりうる現象です。
ただし、日本では、上場企業においても敵対的買収はまだまだ件数は非常に少ないといえます。
上場企業の経営権を取得するような取引は、TOB(株式公開買付け)をする必要がありますが、近年、日本の上場企業に対するTOBは年間40~70件程度で、その中で敵対的TOBはわずか数件程度です。また、敵対的買収が成立するのは株主が賛同した場合だけですので、株主がその時点で最善の選択をしたのであれば、敵対的買収それ自体は必ずしも否定的にとらえられるべきことではありません。
一方、未上場の中小企業では、基本的に経営者等の経営陣やその親族が株主であることがほとんどです。
M&Aというのは最終的には売り手の株主がその是非を判断するものですが、経営者等の経営陣=株主(ここでは株主である経営者を「オーナー社長」といいます)であれば、経営陣が反対する敵対的買収というのは起こりえません。
通常、中小企業が対象となるM&Aは、オーナー社長と買い手企業とが、譲渡の条件や今後の会社の運営方法について協議し、お互い同意したうえで成立します。
したがって、中小企業のM&Aというのは、ほぼ100%友好的な買収になります。
株主と経営陣が異なる上場企業などでは敵対的買収が起こりえますが、オーナー社長の中小企業の買収は、友好的M&Aになるというのが第一の特徴です。
次に、「日本企業が海外企業を買収した」とか、またその反対に「外国企業が日本企業を買収した」という「クロスボーダーM&A」がよくニュースで取り上げられますが、中小企業のM&Aのほとんどは、日本の国内企業同士のM&Aになります。
クロスボーダーM&Aは、両国のさまざまな制度の相違や、経営手法、企業文化などの違いからリスクが大きくなり、また投資銀行などのファイナンシャル・アドバイザーに支払う報酬も億単位になることがあります。
そうすると、それに見合うメリットがないと買収する意味がないので、売り手企業の売上規模が百億円以上ないと、あまり対象になりません。 また、前述したように、中小企業の経営者はオーナー社長が多いわけですが、「日本企業ではなく、あえて海外企業に会社を売却したい」というオーナー社長はほとんどいないので、海外企業が日本の中小企業を買収するというチャンスは極めて少ないのが実情です。
弊社にも、多くの中国等のアジア企業から、日本の技術力のある会社を買収したいとの問い合わせがありますが、売り手側の日本の中小企業のオーナー社長が、海外企業への譲渡を好まない場合がほとんどです。
やはり、日本の中小企業の経営者は、
「海外企業には技術・ノウハウを流出させたくない」
「人員削減や取引先の変更などの抜本的な改革を行う可能性の高い海外企業には、会社を売却したくない」
というマインドが強いようです。
したがって、中小企業のM&Aはほとんどの場合、売り手も買い手も国内企業になります。

中小企業のM&Aの3つめの特徴は、「M&Aアドバイザー」ではなく「M&A仲介会社」が関与しているケースが多いことがあげられます。
ファイナンシャル・アドバイザー、M&AアドバイザーやM&Aアドバイザリー会社というのは、売り手または買い手のどちらか一方に雇われて、顧客の利益の最大化を目指す役割を担った存在です。
一方、M&A仲介会社は、売り手と買い手どちらか一方の利益の最大化を目指すのではなく、両者の間に立って客観的に中立的な立場で交渉の仲介を行います。上場企業が売り手の場合は、経営陣はあとで不特定多数の株主に訴えられないように、「そのM&Aの手続きが適正か」「譲渡条件が妥当かどうか」が厳密に問われることになります。
したがって、利益相反の可能性のある仲介ではなく、法的リスクを最大限回避するために、投資銀行などのアドバイザーをつけて、買い手と丁々発止の交渉をすることになります。
中小企業のオーナー社長が売り手の場合は、少し極端にいえば、誰に譲渡しようが、いくらで譲渡しようが(ほかの株主がいなければ)オーナー社長ひとりが納得して判断すればいいわけです。 したがって、一般的にフィーが高く、また議論が紛糾し交渉が長期化しやすいアドバイザーではなく、友好的に交渉がまとまりやすい仲介会社を使うことが多くなります。
また零細企業のM&Aにおいては、売り手、買い手が自ら相手探しができる「M&Aプラットフォーム(M&Aマッチングサイト)」も普及してきています。
4つめは、上場企業の買収と中小企業の買収のリスクの違いについてです。
未上場である中小企業では、会計監査を受けていたり、内部統制もきちんとできていたりする会社はほとんどありません。したがって、この点では、中小企業の買収は、上場企業を買収することに比べてリスクが高いといえます。
また、大企業では各人が与えられた権限の中で組織として仕事をしていますが、中小企業は大企業と比べて従業員数も少なく、どうしても属人的に仕事をしています。これも「買収後に社員が辞める」という可能性を考えると、リスクが高くなります。
反対に上場企業の買収のほうが、リスクが高くなる側面があります。それは買収価格に関する部分です。
上場企業は、株式市場で将来の収益性が加味された価格(株価)がすでについています。その上場企業を買収するには、通常市場価格に数十%のプレミアムをつけた価格でオファーしなければなりません。
これは経営権という支配権を得るために支払う割増し価格で、「コントロール・プレミアム」と呼ばれます。割増し価格(プレミアム)をつけて買収するということは、買収後にそれに見合うシナジーが創出されて、はじめて元がとれたことになり、さらにより大きなシナジーが発揮されてやっと買収価格を上回る価値が生み出されることになります。
これが上場企業の買収が「マイナスから始まるゲーム」といわれるゆえんであり、大きなリスクといえます。
一方、未上場の中小企業の場合は、そもそも株価に市場価格はありません。入札または買い手と売り手との間での交渉により買収価格が決まります。入札であろうが相対での交渉であろうが、買い手はプレミアムをつける必要はなく(そもそも市場価格がないのでプレミアムという概念もないといえます)、必ずしも大きなシナジーを出さなくても、買収価格を上回る価値を創出できることがあります。
つまり、M&Aはどちらにしても必ずリスクはありますが、上場企業の買収と未上場の中小企業の買収では、異なるリスクがあるということです。
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M&Aの方法は、大きく分けて「買収」「合併」「分割」の3種類に分けられます。 また、これらの方法はさらに「株式譲渡」「事業譲渡」などの手法に分類されます。

日本国内のM&Aの件数は、年々増加傾向にあります。2025年版『中小企業白書』によると、2014年には約2,300件だった日本企業のM&A件数は、2024年には4,700件を記録し、過去最高となりました。 また、これらはあくまで公表されている件数であり、特に中小企業のM&Aについては未公表のものも多く存在することを考慮すると、日本企業のM&Aは更に活発化していることが推察されます。 では、今後のM&A市場はどうなっていくのでしょうか。ここでは、中小企業のM&Aの件数が今後も増えていくと考えられる、4つの要因を紹介します。
