6つの買収理由とは?

2026.01.15 更新

  • M&A豆知識

本来、企業買収は株主、社員、顧客(取引先)、社会などのいずれか、あるいは複数のステークホルダーに報いるために行われるべきものです。
しかし、実際には、企業はさまざまな理由で買収を行っています。
ここでは、代表的な以下の6つの買収理由について説明します。

なお、これらの中には、必ずしもステークホルダーのためになっていないものもあります。

① 売上・シェアを大きくしたい、利益を増やしたい

買い手の買収理由として、以下のようなものがあげられることがあります。

「他地域(海外含む)に進出したい」
「成長市場へ参入したい」
「人材を確保したい」
「顧客がほしい」
「規模のメリットを追求したい」
「研究開発費、製造コスト、間接費を削減したい」
「ブランド力・技術・特許・許認可・総代理店の地位がほしい」
「将来転売してキャピタルゲインを得たい」

しかし、これらはすべて詰めれば、「売上・シェアを大きくしたい」か「利益を増やしたい」かのどちらか、あるいは双方が買収理由ということになります。

この2つをあえて併記していますが、コーポレート・ガバナンスの観点からは、「売上を上げるべきなのか」あるいは「利益を上げるべきなのか」というのは非常に大きな問題です。

会社の所有者である株主としては株主価値(株価)や配当額が増えることが最重要で、そのためには会社の利益(正確にいうと将来キャッシュフローの現在価値)が大きくなることを最も重視します。

しかし、経営者は必ずしもそうではなく、利益を度外視して、売上を上げたり成長を目指したりすることがあります。

経営者がこのような行動をとるのは、企業規模が大きいほど経営者の名声が上がったり、達成感が得られたりするためと考えられています。

また、成長していないと(少なくとも成長を目指さないと)、優秀な従業員を採用できないという考えも影響することがあります。

ここでは経営者のこのような行動の是非は論じませんが、このようにM&Aも株主利益のためというより、経営者が規模や成長を追求するために行われる可能性があることは知っておくべきでしょう。

② 業績を安定させたい

1年の中で繁忙期や閑散期があるビジネス、数年にわたる好況と不況のサイクルがあるビジネス、あるいはフロー型のビジネスをしていて業績が不安定な会社の経営者は、「売上・利益を安定させたい」というインセンティブをもちがちです。

そのため、買収で事業を多角化することによって、会社全体として業績の安定化をはかることがあります。ただし、事業多角化が株主から歓迎されるとは限りません。

③ いろいろな事業をやりたい

現業である程度成功した経営者が、「自分はほかのビジネスでも成功できる」という経営者としての能力を世間に示したいといったようなことが動機になって、買収によってさまざまな事業の経営に乗り出すことがあります。

必ずしも「売上や利益を上げたい」「業績を安定させたい」という動機ではなく、現業に飽きて刺激がなくなっている場合に、他事業を次々と買収して自分の王国を築こうとする経営者もいます。

④ 役員・社員にポジションを与えたい

会社の中で管理職の数に余剰感が出てきたときや、将来の社長や幹部候補に経営経験を積ませたいときに、買収が行われることがあります。

そして買い手は買収した会社の取締役や管理職に人材を送り込んで経営にあたります。

ただし、買収した会社の従業員を抱えることになるので、将来的にはまた管理職のポジションが不足するということも起こりえます。

また、オーナー企業の中には、「子どもに事業を残したい」との理由で企業買収をすることがあります。

たとえば、長男に会社を継がせることが決まっていても、次男には長男の下でやらせるのではなく、違う会社を経営させたいと思う場合です。

⑤ 自分たちがやったほうがうまくできる

これは、もちろん買収後にシナジーを出して、売上・利益を上げたいということもあります。しかし、それよりも、

「この事業は自分たちがやったほうが絶対うまくできる」
「自分たちがやるべきだ」

といった経営者としての使命感、自尊心、または思いあがりを契機とした買収です。

これはある種人間の本能に基づくものです。
必ずしも金銭的報酬のみを求めたものではなく、能力を発揮して世の中に貢献したいという内発的動機による買収といえます。

⑥ 頼まれたから

業績不振や経営者に不幸があった取引先などから話が持ち込まれて、救済的な意味合いで行う買収です。

もちろんある程度の勝算や少なくとも損をしないという計算がないと買収は行いませんが、積極的に自ら買収に乗り出したのではなく、頼まれて温情から行う買収です。

以上、6つの買収理由を見てきましたが、売却理由の場合と同様、どれかひとつだけが理由になっているのではなく、複数の理由が合わさっていることもあります。

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