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株式会社ビークル

決め手は「二つの信頼」-インテグループ担当者と譲渡先の同仁グループ社長

譲渡企業譲受企業
株式会社ビークル株式会社同仁グループ
京都府熊本県
医薬品製剤製造業ライフサイエンス・ヘルスケア事業
スキーム 株式譲渡

世界レベルのバイオ製品を研究・開発・販売する大学発ベンチャー企業、ビークルの郷保正代表取締役(68歳)は今般、ライフサイエンス・ヘルスケア事業をグローバル展開する同仁グループへの株式譲渡に踏み切りました。20年以上にわたり研究畑を歩んだ後、経営トップとして13年間、ビークルを牽引してきた郷社長に、譲渡先である同仁グループへの思いや、株式譲渡を決断するに至るまでの経緯、そしてインテグループの存在などについて伺いました。

 

アレルギーや炎症の研究・開発で手腕発揮-塩野義製薬で働いた20年

郷社長のキャリアパスをお聞かせください。

名古屋大学大学院で魚の味覚や嗅覚という化学感覚器の研究をしていました。手法としてはいわゆる電気生理学的手法というもので、神経を取ってきて、その神経から、いろいろな電気的な変化を見て研究する手法です。

1980年3月に大学院を出た後、電気生理学が得意だということが買われて、アメリカのウッズホール海洋生物学研究所に3年間いました。結構有名な研究所で、ノーベル賞を取った人がたくさんいるようなところです。そこでの立場はNIH(米国国立衛生研究所)の研究員でした。

そこでは、ウミウシの脳の神経細胞から、記憶だとか学習だとかを電気生理学的に明らかにしようという研究をしました。今思うと、そのころが一番ハッピーな時代でした。ちょっと先行きの不安がありましたけれど。

1983年に入社した塩野義製薬では、神経、生化学的な実験やアレルギー、炎症といったことにずっと携わるようになりました。ある時からプロジェクトマネージャーをやりながら研究するという立場を10年近くやりました。

その後、研究所から医薬開発部に移って、アレルギーや炎症の開発品のプロジェクトマネージャーをやっていました。辞めるちょっと前に、そこの部門長になって、かなり一時期は権勢を振るっていたのですよ(笑)。

塩野義製薬での在職期間と退社なさった経緯を教えていただけますか。

在職期間は20年ぐらいです。当時、部門長は若い人に譲るべきだという制度が会社内にできたのです。それで塩野義を辞めました。

ビークルに入社されるまでの経緯はどのようなものですか。

2004年、長浜バイオ大学に移った後、製薬業界の知り合いから「ビークルという面白い会社があるから来てもらえませんか」という話があり、ビークルに入りました。2007年5月に入社し、翌6月の株主総会で代表取締役になりました。

 

2008年にsiRNA送達で世界的偉業、しかし共同研究打ち切りに

経営でご苦労なさったことなどありますか。

ビークルは2002年に岡山大学、神戸大学、大阪大学、慶応義塾大学4大学共同の大学発ベンチャーとして設立された会社ですが、彼らの技術がビークルに殆ど移管されていなかったのです。これではまずいと思って、とにかく会社に技術を集積させるために一生懸命やりました。

幸いなことに、2007年、2008年当時に、医薬品の次の有効成分として脚光を浴びていたのがsiRNA(核酸)です。
「これはしめた」と思いました。もともとビークルという会社は、核酸を送達するという技術を基本の技術としてやっていたので、それをsiRNAに応用しようということで、かなり研究開発を一生懸命しました。

かなり苦労しましたが、幸い比較的早い段階で、送達できる技術を作ったのです。それが結構評価されました。実は、ちょっと自慢しますが、そういう技術を開発したのは世界で2番目か3番目ですごく早かったのです。もともとの蓄積があったからです。

それで大手製薬会社と契約して一緒に研究を始めたのですが、2010年秋にsiRNAの副作用の問題があり、駄目になってしまいました。世界中の製薬会社がsiRNAから手を引いてしまったため、どうしようもなくなってしまいました。2013年が本当に、どん底でした。会社を畳もうとか、畳む手段をいろいろ考えたこともあります。

その大手製薬会社との研究が駄目になった時、研究用試薬の開発を始め、新薬をぽつぽつと出していったのですが、幸い、結構評判が良くて、一定の売り上げがありました。そして2013年に京都に移転してきたのです。そして、2015年ごろになると、かなり売り上げも安定して、経営も安定してきました。
そして2015年ごろから本格的にB型肝炎ワクチンの開発を始めたのです。その後は、試薬の売り上げも結構伸びています。

 

インテグループからの連絡は「渡りに船」

大手製薬会社と提携や、ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達という選択肢がある中、なぜM&Aによる譲渡に踏み切ったのですか。

ビークルの選択肢としては、M&Aは最後の選択肢だったのです。もしどこかの製薬会社と開発で契約できるか、VCからそれなりの投資を受けられるというのが、本当は理想でした。

ある大手製薬会社は、B型肝炎ワクチン開発をしているビークルとの提携について「大いに検討する余地はある」と言ってくれたのですが、新型コロナウイルス感染症に人手が取られてしまって、ストップしてしまっています。

また、ビークルが(設立から18年)そこそこたっているという問題などもあって、VCから資金調達がなかなかうまくいきませんでした。

そんな時にインテグループから連絡があり、「渡りに船だ」というような感じだったのです。数カ月早かったら断っていたでしょうし、遅くてもそうです。本当によいタイミングでした。

インテグループとの初面談から始まり、譲渡先との面談などすべてがスムーズに進みましたが、何が決め手ですか。

決め手は、担当してくださったインテグループの松井さんがいい人で、信頼できると思ったことです。もう一つは、同仁グループの上野社長が信頼に足る人だと思ったのが一番大きな決め手ですね。上野社長と2回目に会った時に「絶対に大丈夫だ」と確信を持ちました。

上野社長はかなり寛容なスタンスで臨んでくださいました。私自身の待遇もあるし、従業員がどうなるかという問題が一番大きな不安材料でしたが、上野社長からいただいた提案が決め手の一つです。

打診から譲渡までの期間に不安や苦労はありましたか。

いいえ、悩んだということはあまりないかもしれません。ただ、M&Aの契約関係について弁護士に相談していろいろアドバイスはもらいました。

 

「同仁グループの試薬は安心できる」-昔からのユーザーとして

同仁グループを選んだ理由を教えていただけますか。同仁グループの魅力はどこにありますか。

ビークル自体が、同仁グループの試薬のユーザーなのですよ(笑)。昔から同仁の試薬を時々使っていて、「同仁の試薬は安心できる」というのが、結構大きいですね。

もう一つ、同仁グループは非公開会社のため財務状況、経営状態がよく分からなかったので、取引先銀行にちょっと頼んで調べてもらったところ、超優良企業だと知って、それも安心材料でした。

株式譲渡について、従業員の反応はいかがでしたか。

ビークルの従業員も、同じように同仁の試薬のユーザーとして信頼感を持っている人が多いので、否定的なことを言う人は一人もいなかったです。

郷社長が今後やりたいこと、期待していることを教えてください。

私も、もうそれほど若くないのですが、私がやっている業務を引き継ぐ人がいないのです。それがずっと僕の中で、大きな会社運営上の悩みでした。とにかく後継者を何とかしないといけないとずっと思っていたのです。
同仁グループの上野社長にも、そのことを話しまたところ、上野社長は「すぐにやれるかは別として、重大な問題なので、考えなければいけませんね」と言ってくれたので、それも(同仁グループへの譲渡を決断した)非常に大きな要因の一つですね。

 

ほっとした感じ-株式譲渡を終えて

株式譲渡を終えて、心境に変化はありますか。

譲渡する前と後でちょっと心境の変化があります。今まで自分がオーナーだったのが、そうではなくなるというのは、いろいろなところで違います。(ポジティブ・ネガティブ)両方です。

後継者問題が結構、僕の中で重荷でした。それについては心配しなくて何とかしてくれるだろうというところがあって、非常によかったと思います。

一方で、自分がオーナーでやっているという責任感があったから仕事に邁進できていたところがあるのですが、その強さが、若干弱まったかなと(笑)。でも心の余裕ができて少しホッとしています。

ビークルの特徴と強みと、同仁グループとの役割分担についてお聞かせください。

試薬の製造・販売という業務が、売り上げと経営上では重要です。もう一つはワクチンの研究・開発という二本柱です。

試薬の方は、同仁グループと協力するので、これから売り上げ向上に結び付くと思います。将来的には、同仁グループにかなりの部分を移管することになって、ビークルが自ら売るということはほとんどなくなると思うのですが、ビークルの商品が売れるということですので、モチベーションが上がります。

もう一つのワクチン研究・開発は、ビークル単独で当面はやらざるを得ないので、今まで通りですね。ちょっと、いろいろな不安がなくなった部分、打ち込みやすいということです。

インテグループに依頼してよかったですか。よかった点をお聞かせください。

よかったです。一番良かったのは、反応が速かったことです。インテグループにメールを出すと、すぐに返信が来るので、すごくやりやすかったです。それが本当に大事です。

 

他の研究・開発型企業も「売却をもっと積極的に考えた方がいい」

企業売却を検討している経営者や、研究開発型のベンチャーの経営者に対するメッセージをいただけますか。

ビークルみたいな研究開発型の会社は、売却をもっと積極的に考えた方がいいと思います。結局、売り上げがあまりないから研究開発型のベンチャーなわけで、結構、経営上は楽ではないのは間違いないと思います。

人によっては、何とか成功させていくことに生きがいを感じている人もいるかもしれませんが、日本社会では、いわゆる研究開発型ベンチャーが成功するようなシステムがないので、正直に言って、現実問題としてものすごく難しいです。特にバイオ系は、時間がかかるので。

最近よくベンチャー企業を見ていますが、研究していないところがほとんどです。開発はやるけれど、研究しているところはほとんどないです。研究と開発はだいぶ違います。自分で新しいことを発見しないと商品ができないけれど、すでにある技術を寄せ集めて開発するのと、研究して新しい技術を見つけてものをつくっていくのとでは、だいぶ差があります。技術の寄せ集めのような会社が多いです。これは日本全体に言えるのかもしれませんね。

他の研究開発型ベンチャーも、M&Aを優先的に検討すべきだとお考えですか。

最近、結構多いと思いますよ。いわゆるベンチャー企業で、M&Aしていく企業を記事でよく見ますね。僕はこの業界が長いので、いろいろな会社を知っていますが、きのうも「あれ、どこかのグループの一員になっているな」ということがありました。

第二の選択肢、第三の選択肢かもしれないけれども、相手によります。そこが問題です。十分、第一選択肢として考えてもいいと思います。

「コロナ禍」の影響を受けていますか。

ビークルはそれほど大きな影響を受けていません。確かに(2020年)2~4月の売り上げが落ちました。多分コロナの影響だと思います。大学が閉まってしまい、バイオ系の人は研究室に行かないと実験ができなくなるので、当然、注文が減ります。その影響かなと思っています。
ただ、全体としてみると、それほど大きな影響は出ていないと思います。逆に、ビークルも、あるところから頼まれて、新型コロナウイルスのワクチンとか診断薬の開発側に組み入れられています。

新型コロナウイルス感染症関連で新たな受注の可能性が見込めるのですか。

はい。いま、その研究・開発を一生懸命やっています。ただでさえ多い草鞋(わらじ)なのですが。

 

インテグループ担当者からの一言
研究開発型の創薬ベンチャーが、グローバル展開する企業と提携
ビークル様は、主にB型肝炎ワクチンの研究・開発及び研究用試薬の製造・販売を手掛けていらっしゃいます。特許も多数保有し、海外大手製薬会社との直取引を行うなど、注目を集めている創薬ベンチャーの一つです。本件はM&Aの活用により、売り手は創薬の研究開発を加速させ、買い手は事業領域を拡大できた事例です。インテグループでは、このようなベンチャー企業のM&A活用もご支援しております。是非ご相談ください。
コンサルティング部
マネージャー 松井憲太