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株式会社POP

若き経営者がM&Aで会社を売却し、次に見据えるステージとは

譲渡企業譲受企業
(株)POPクレアシオン・キャピタル(株)
千葉県東京都
保育園投資事業
スキーム 株式譲渡

保育園事業を始めてからわずか3年で事業を売却。その資金を元手に新たな事業を始めようという若き経営者が、株式会社POPの元社長・株主の森田洋介さん(25歳)です。代々商売を手がける家系に生まれ育った彼にとって、起業も会社売却も自然な選択でした。事業承継ではなく、シリアルアントレプレナー(連続起業家)としてのM&A活用法を聞きました。

 

きっかけはビジネスとしての魅力と身近な待機児童問題

このたび小規模認可保育園の運営を手がける株式会社POPを売却されたわけですが、創業の経緯から伺います。聞くところによると、森田さんは今年25歳と非常にお若い。逆算すると、10代で創業されたことになりますが。

私が19歳のときにつくった会社です。当時はまだ大学生だったので、代表は私でしたが、実質的には父が運営していました。父はもともと不動産業とリフォーム業を手掛けていたのですが、2011年の東日本大震災で少なからず影響を受け、新しい業種に挑戦しようと考えていたらしいです。それを息子名義の会社で。

会社を設立したのが2013年4月。最初は父の会社が所有する商業用ビルに客付けする不動産仲介業を行っていました。不動産以外の事業拡大にあたって、その一角を借りて飲食店経営を始める計画もあったのですが、保育園の運営に乗り出したのが2015年10月です。千葉県東金市を皮切りに、成田市に3園、合わせて4園開設しました。

保育事業所の運営主体は圧倒的に市町村や社会福祉法人が多く、株式会社の参入は数%と聞きます。待機児童問題の解決を含め、社会的意義は非常に大きいのですが、ビジネスとして成立させるのは難しかったのではないですか。

保育園を始めようと思った理由は、父が日本商工会議所に所属していて、そこで仲間の方が株式会社で保育園を運営していて、「儲かるよ」と言われたことが一つですね(笑)。もう一つは、父の会社に勤務していた女性従業員の方が、子どもが生まれたときに保育園が見つからなくて、産休・育休から仕事に復帰するのが6カ月遅れて、待機児童の問題を身をもって感じていたことが大きいです。

保育園の運営は補助金事業ですし、大事な子どもたちの命を預かる仕事ですから、儲かる仕組みになっています。まだまだ比率としては少ないのですが、株式会社の参入も増えています。偶然にも、前述の女性従業員が当社で保育園事業を始める1年前くらいに保育士の資格を取得していて、そのスタッフを事業の核として準備を進めました。開園にあたっては、必要な書類や設備、園児の人数に対する必要な保育士の数など、運営のノウハウを市役所が手取り足取り教えてくれたので、スムーズに進んだと思います。

 

おむつ、ミルク、ベッドは無料。「手ぶら保育」で差別化を図る

保育園としての特徴や方針はどのように考えていたのですか。

「手ぶら保育」をやっていました。保育園のなかには、“保護者思い”でないところがまだまだたくさんあって、おむつやミルク、布団など、すべて自分で用意するのが普通なんです。一歳、二歳になって、おむつをはくトレーニングをするときって、お昼寝の時間におねしょをしちゃう子が多いんです。そうすると、おねしょした布団を保護者の方が家に持って帰って、洗濯をして干して、また次の日に持ってこないといけないわけです。保育園に預けることイコール共働きなわけで、そんな人たちに夜の7時に濡れた布団を持って帰らせて、また持ってこさせるなんて、あまりにもヒドイんじゃないかと思って。

やっぱり、いくら保育園内で子どもたちによい保育をしても、家に帰ってお父さんやお母さんがストレスを抱えていると、どうしても子どもはそれを感じてしまうんですね。なので、うちは保護者の負担を少しでも減らしてあげましょうということで、「コット」というメッシュのベッドを使っています。メッシュだと、おねしょしても全部床に落ちるだけなので掃除が楽です。保護者の方に持ってきてもらうのはシーツだけで、ベッド代も一切いただきません。おむつとミルクも無料で提供しています。

お父さん、お母さんはお子さんを毎日連れてきてもらえれば、それ以外は何もしなくていい。昼間は仕事に集中してもらって、夜、家に帰ってからも、おむつゴミを捨てたり、次の日のおむつの用意をしたり、ミルクも買わなくていい。その分、お子さんと向き合ってください。そんな取り組みをやっていました。

この地域でほかにも手ぶら保育を行っている保育園はあるのですか。

成田市では当園だけです。実はそれも、我々が考え出したものではなくて、前述の日本商工会議所の知り合いのなかに、他県で同様の取り組みをされている方がいて、そこに視察に行ったり、話を聞いたりして、いいなと思って参考にさせていただきました。

公立の保育園や社会福祉法人が経営する保育園には、自らサービスをよくしていこうという発想があまりありません。我々は株式会社ですから、どうすれば他の保育園と差別化ができるのかを考えて、サービスの質を向上し、収益を上げていく必要があります。

おむつ代やミルク代は誰が負担するのですか。

完全に会社負担です。保育料は世帯収入で決められていますから、別途、費用を徴収することはできません。保育園事業では、子どもを一人預かると、月額いくらの補助金が市から出るわけです。そこから、おむつやミルクを無料サービスで提供しても、経費率はたかが知れています。であれば、利益を残しながら、サービスを改善していったほうが、保護者の方にとっても、我々にとってもメリットがあるわけです。

 

大きな資本の傘下に入れば成長の余地はある

4つの保育園を開設されましたが、どのような事業計画を描いていたのですか。

最初はつくれるだけつくりたいと考えていました。地元だけじゃなくて、日本中でです。

我々は2015年に保育園事業を始めたのですが、2018年までに成田市では待機児童の問題が解決したので、保育園開設の認可が下りなくなったのです。であれば、東京へ進出しようと思ったのですが、場所が確保できません。たとえば成田市であれば、3件新しく認可保育園を募集しますといったときに、3、4社の業者しか応募してこないのですが、東京だと3件に対し、20社以上の競争になり、そのなかには東証一部上場企業も含まれていて、当社のような中小企業ではとても太刀打ちできないことが明らかになったのです。

20件、30件くらいまで拡大しようと考えていたのですが、これ以上、会社を大きくすることは難しい。そんな壁にぶつかったのが2017年夏のことです。

それでもこの会社を大きな資本の会社に譲れば、その大きい資本の下で伸びていくことは可能です。今回、クレアシオン・キャピタルという投資ファンドに当社を売却したのですが、彼らの傘下に関東圏で保育園を27園運営しているアルコバレーノという会社があって、そういう大きな会社に引き継いでもらえば、まだまだ成長の余地はあります。このまま自分でやっていても10年後にはジリ貧になることが目に見えていたので、このタイミングで思い切って売却を検討しました。

保育園事業を始めてわずか3年です。会社を売却するという選択肢はもともとあったのですか。

最初はなかったです。やはりこれも、手ぶら保育を参考にさせてもらった日本商工会議所の方に「保育園も売れる」ということを教えてもらって、M&Aの仲介業者を探し始めました。もっとも父はもう少し事業を続けてほしかったようです。一方で、私は大学3年までにすべての単位を取り終えて、4年になってから1年間、タイに住んでいて、小さな飲食店を経営していました。私自身としては、会社を売却して、その資金を持って海外で事業にチャレンジしたいという思いが強くて、それを伝えたら、なんとか納得してくれました。

 

完全成功報酬制のM&A仲介会社を選定

――このまま地元で保育園事業を続けていても事業拡大は難しい。そんなときに、知り合いの方からM&Aという手法を聞いて、実際どんなものかということで、インテグループを含めいくつか仲介業者を当たったわけですか。

インテグループさんを含め、3社にアプローチしました。最初に会ったのが、保育園事業者が集まってつくる協会組織でした。仲介手数料は無料というふれ込みにひかれて相談に行ったのですが、金額ありきで、いきなり契約書にサインをしてくださいといわれたので、「ちょっと考えます」と言って、その場を去りました。

次に会ったのが、個人でM&A仲介をやっている方でした。当社の価値を評価してもらったところ、4500万円ぐらいで売れるだろうと。3社ぐらいに当たれるのでどうかと言われました。もう1社、インテグループさんが残っていたので、返事を保留しました。

インテグループの依田(真輔マネージャー)さんからは、「1億円で売れる」と言われ、「これだけの会社が、保育園を買いたいといって当社に登録している」と、初回の打ち合わせで50社くらいの買い手候補リストを提示され、あっけにとられたのを覚えています。

M&Aの仲介業者はどうやって探したのですか。3社を選んだ基準はあったのですか。

全部ネットで探しました。条件は、中小企業のM&Aも扱っていること。あとは完全成功報酬制のM&A仲介会社かどうかです。本当に会社が売れてお金が入ってくるまで費用は一切請求しないというところを選ぶと、何社かに絞り込むことができます。

完全成功報酬制のM&A仲介会社にこだわったのは、当社のような中小企業だと、手付金を払って失敗されると、がっかりするからです。ですから、依田さんには電話で何度も確認しました(笑)。

「1億円で売れる」というのは半信半疑だったのですが、それでもインテグループさんは50社ぐらいのリストを出されて、このなかから10社ぐらいは興味を持つだろうということで、その10社で競争を生ませるような交渉をしますと説明を受けました。最初に話し個人のM&A仲介業者は3社なので、完全に買い手有利の交渉になってしまうなと思いましたが、インテグループさんなら、ある程度売り手有利で交渉できるんじゃないかと思えた点も大きかったですね。

 

終始一貫して売り手目線でM&Aをサポート

初回の打ち合わせがから約2カ月後には複数社と面談を行い、基本合意に至った買い手もあったそうですね。それが破断になったときの心境はいかがでしたか。

残念ではありました。「担当者としては話を進めたいが、取締役会で承認を得られなかった場合はダメになる」というような話し方をずっとされていて……。当社としても少し落ち度があって、先方が要求してくる書類をなかなか揃えられなかったのです。自治体によって基準は異なり、その書類は不要なケースも多いのですが、先方は上場企業ですから、小さなリスクにも目をつぶるわけにいかないということだったのでしょう。

最初の買い手候補は見送りになってしまいましたが、間髪入れずに次の買い手候補と面談が進みましたね。

納得のできる金額で意向表明書を出してくれた買い手候補が控えていたので、すぐに気分を切り替えて、話を進められました。今回、売却することになったクレアシオン・キャピタルさんは、買収の決裁権を持つ担当者の方が直接交渉に来てくださったので、とんとん拍子で契約がまとまりました。

クレアシオン・キャピタルは投資ファンドです。ファンドに売却することに抵抗感を持つ経営者もいますが、その点についてはいかがですか。

クレアシオン・キャピタルの投資先にAXコーポレーションという持ち株会社があり、その傘下に保育園事業を手掛けるアルコバレーノがありましたから、不安というよりもむしろ安心でした。アルコバレーノさんは企業主導型保育所の運営で当社よりも経験がありましたから、その点も頼れるなと思いました。もし投資ファンドだけだったら、会社売却について、従業員に自信を持って説明できなかったかもしれません。

実際に売却して、満足されていますか。

デューデリジェンス(資産査定)の結果、最初に提示いただいた金額から、少し下がったのですが、それでも想定内の範囲で満足しています。クレアシオン・キャピタルさんからは、引き継ぎ期間が終わった後も関係を続けていきたいと言われたので、友好的な印象を持ちました。インテグループの依田さんは、最後まで一貫して売り手目線でM&Aをサポートしてくださいました。結果的に最も高い金額で売却できましたので、他の仲介業者に依頼しなくて本当によかったと思います。

今後の予定を伺います。タイに移住されるとのことですが。

妻が居住するタイに移住して、IT系のビジネスを立ち上げる予定です。最初の1年くらいはなかなか収益が上がらないかもしれませんが、向こうの生活費は日本の3分の1で済みます。すでに家も買って、ローンも終わっているので、1、2年は新事業に集中するつもりです。

最後に、会社の売却を検討している経営者にアドバイスやメッセージをお願いします。

経営者によっても違いますが、会社はうまくいっているけれど後継者がいない場合は、悩むことなくM&Aを検討されたほうがいいと思います。会社の業績が悪い場合も、決してあきらめることなく、専門家に相談されるといいです。同業他社や自分が思ってもいなかった異業種企業がシナジーを求めて買い手となるケースが考えられるからです。

そして交渉にあたっては、自分が希望する金額で売却するために、強気の態度で臨むことが重要です。もし、次に会社を売却することがあったら、今回以上に強気でいきたいと思います。

インテグループ担当者からの一言
M&Aにより海外移住の夢を叶えた成功事例
「タイに移住したいからです。」、初対面から明確な目的を持ってM&Aを決断されていたことがとても印象に残っています。目的を達成すべく、会社の業績が良いタイミングで譲渡を決断されることは経営者でもなかなか出来ないことだと思います。本件は、M&Aの活用により、自身の夢を叶える(売り手)、買収でさらなる売上UPを目指す(買い手)、双方の希望が実現した成功事例になったと思います。
コンサルティング部
マネージャー 依田真輔